Lens Impression
作例を見てもわかるように、このビオターの周辺の描写はかなりの曲者です。ダブルガウス型といえば一般的には輪帯部のコマ収差が目立ち、それによる絞り開放時のハロ・フレア、後ボケの変形、そして球面収差を抑えるための過剰補正に伴う2線ボケなどが描写の特徴となりますが、このビオターでは周辺にかなりの像の流れが現れています。いわゆる「ぐるぐるボケ・放射ボケ」ともちょっと異なる乱れ打ちのようなイメージを受けました。
ぐるぐるボケを含むこのような周辺の流れを発生させる大きな要因である非点収差はサジタル・メリディオナル像面の乖離で発生しますが、4群6枚という少ないガラス面のレンズ構成で無理やり両面を合致させると、その合成である画面全体の像面が傾いてしまいます。理由ははっきりしませんが、ビオターは非点収差を抑えることよりも、まずは明るさを確保し、平均像面をできる限り傾けないことを選択したということになるのでしょう。
レンズ構成を見ると、各ガラス曲面の曲率はかなり高そうです。ガラスの選択に限界がある中で高い屈折率を確保して開放f値を明るくするためには、まだ時代的に環境が十分整っていなかったともいえるかもしれません。
ビオターは最初期に40mm、50mmなどで開放値f1.4が作られたが、さすがに収差の抑え込みに苦労したのか、1936年には開放値をf2に抑え一眼レフにも対応可能な58mmの焦点距離のものが開発され、その後主力となっていきました。。
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